S3プラットフォーム 導入事例
インタビュー

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株式会社メディセオ 若菜純 様

「この国で、薬を届けるという使命。」
たとえ災害時でも止まらない物流を目指し
センシングシステムの活用で品質管理を強化

  • 株式会社メディセオ
  • 常務取締役
  • ロジスティクス本部長
  • 若菜 純 様

株式会社メディセオ

https://www.mediceo.co.jp/
医療用医薬品、医療機器、医療材料、臨床検査試薬等の卸売業

株式会社メディセオ様は、東京都中央区に本社を置く医療用医薬品や医療機器等の卸売事業では国内大手の企業です。
有事の際も止まらない万全の設備と確実な納品を可能にする高度なシステムを搭載し、お得意様起点で流通プロセスの全体最適を実現する高機能物流センターALC(Area Logistics Center)とFLC(Front Logistics Center)を全国で展開されています。
ALC・FLCではセンシングシステムを活用する品質管理の強化が進められています。この取組みを推進されている常務取締役 ロジスティクス本部長の若菜純様に話をおうかがいしました。

「卸の原点は物流である」
~震災の経験から目指した災害に強い卸と物流~

メディセオが所属するメディパルグループは神戸の発祥で、1989年(明治31年)に創業し、2024年度で126年目を迎えます。主に医療用医薬品卸売事業、化粧品・日用品、一般用医薬品卸売事業、動物用医薬品・食品加工原材料卸売等関連事業と3つの事業を行っています。

2023年9月に最新の高機能物流センターである阪神ALCを兵庫県西宮市に竣工しました。兵庫県は1995年の阪神・淡路大震災で「震度7」と言う未曽有の大地震を経験し、多くの死傷者・建物や施設の損壊など大きな被害を受けました。

メディパルグループでも本社・支店の損壊やホストコンピューターのダウンなど大きな被害を受け事業再開まで多くの時間と困難が生じました。当時の経営者はこのときから「卸の原点は物流である」、このようにとらえ災害に強い卸と物流を目指しました。

㈱三星堂(現:メディパルHD)の車両

1995年1月 阪神・淡路大震災時、
神戸市で商品を届ける㈱三星堂(現:メディパルHD)の車両

「改善と進化を続けるALCの高機能物流
~品質管理機能の強化でS3プラットフォームを導入~

2009年、最初のALCが神奈川県横浜市に誕生しました。ALCは医療機関に近い都市部に設置され直接お届けする新しいコンセプトの物流センターです。あらゆる自然災害を想定し〝止まらない物流〟を実現するために必要なさまざまな最新設備を設けました。

そして、神奈川ALCを稼働してから2年後の2011年、東日本大震災が発生しました。神奈川ALCも震度5の地震に見舞われましたが、棚から商品が落ちることなくすぐに稼働再開を致しました。また原子力発電所の停止等に伴う電力の供給力不足による計画停電など、長時間の停電がしばしば発生しましたが、自家発電設備の稼働で平常どおり商品供給を行うことが出来ました。

ALCの高機能物流機能は今も常に改善と進化を続けています。2023年10月に稼働した最新の阪神ALCでは、これまでのALCよりもさらに高い生産性を目標に、すべての工程をゼロベースで見直しました。
ALCのミッションは、医薬品の生産から患者さんまでの流通全体が最適化され、無駄のない生産性の高い物流を実現することです。そのためにお客様の満足を高めるための改善をくり返してきました。

ALCの最大の特徴は、全ユーザー別に完全梱包の配送を行っていることです。従来は、配送担当者別に混載梱包をしておりましたが、ALCではユーザー別に梱包して封印し、お得意様にお届けするまで誰も触れないノータッチシステムを実現しています。
この物流精度と高生産性を支えるのが最新の物流システムAUPUSⅡ(Automatic PiecePicking Ultimate SystemⅡ)であり、この投入によって高い生産性と高機能の物流を実現しました。

品質管理の面においても、医薬品の適正流通ガイドライン、いわゆる「GDPガイドライン」に準拠し、温度管理、偽薬対策、衛生管理などの対応を行っています。
この阪神ALCで開発したAPUSⅡはピッキング投入と梱包の作業が一体化されており、それぞれの工程が細かく連携されております。
この「止まらない物流」と「厳格な品質管理」を担う機能を強化するために、神栄テクノロジーのセンシングシステム S3プラットフォーム を導入しました。

阪神ALC 外観

阪神ALC 外観

AUPUSⅡ(Automatic PiecePicking Ultimate SystemⅡ)

AUPUSⅡ(Automatic PiecePicking Ultimate ystemⅡ)

新型コロナワクチン流通体制の構築で神栄テクノロジーと協働
~国内初の画期的な大型コールドチェーンを確立~

メディパルグループは、2019年に国が行う新型コロナワクチン接種事業に製薬メーカー様と参画しました。当時、新型コロナウイルス用に開発されたm-RNAワクチンは、マイナス20℃±5℃という厳格な冷凍保管と配送が求められました。

過去に医薬品卸が経験しなかった超低温品の多頻度、大量流通について教育研修や導入管理、安定稼働までオールインワンで円滑に行うことを厚生労働省と製薬メーカー様へ提案しました。
これにはセンターから接種会場まで入荷・保管・仕分け・配送など全てのプロセスにおいて、誰もが簡単に操作でき、常にワクチンの温度状態を把握して記録するための手順が重要でした。加加えて、接種開始まで半年という短期間でこれを構築し運用できる体制を整えると同時にGDPに準拠した品質管理も必須でした。

神栄テクノロジー様とはコロナ禍前よりセンター内や配送車両の温度管理について検討を重ねており、ちょうど温度ロガー G-TAG TempViewの試作器が完成した時でありました。
一般的な温度ロガーとは異なり、スマートフォンのアプリで操作やデータの取り出しができる独特なG-TAGのしくみであれば、大量流通で運用できると考え、神栄テクノロジー様へ短期間での製品化と量産を依頼しました。
結果、製薬メーカー様の要望以上の温度ロガーが完成し、ワクチン接種開始に製品供給も間に合いました。
また、接種事業の開始後、記録保管をするための管理クラウドも神栄テクノロジー様で短期間に構築し運用を開始しました。

温度ロガー G-TAG TempView

温度ロガー G-TAG TempView

接種開始以来、全卸の70を超える事業所で約6,000台のG-TAG TempViewが使用され、実に8万レコードという、過去に類のないビックデータが適切に管理されており、また、温度ロガーの故障やクシステムの不具合によるデータ喪失はゼロでした。
当社では、このように信頼できる実績を持つ神栄テクノロジーが展開するS3プラットフォームを導入し活用することで、卸の物流品質の向上につながっていくと判断しています。

導入システム 1GDP対応クラウド型温度監視システム

気候変動にともなう気温の上昇が懸念される中で、お届けする医薬品の厳格な品質管理は必然であります。一方で従業員の働き方も考える必要があります。
弊社でもIT化による社内業務の効率化をすすめておりコストだけでなく労働環境の改善もテーマであります。
温度管理業務については人の手で行われていた作業が自動化され監視できる事で業務改善につながると考えております。

阪神ALCに導入したGDP対応クウラウド型温度監視システムでは、温度ロガーにPoE方式を採用し、これにより、LANケーブル1本でデータ通信と給電を行うことができるため、電源設備の増設がなく設置が容易で、温度モニタリングポイントの追加や移動もLANケーブルの配線変更だけで必要な場所へ設置できる優れものです。
データはクラウドLogViewで一括管理され、異常検出時にはアラート発報があり、信頼性の高いしくみです。

PoE温度ロガーを指し示す若菜常務

PoE温度ロガーを指し示す若菜常務

クラウド型温度監視システムの全体イメージ

クラウド型温度監視システムの全体イメージ

導入システム 2マテハン機器異常検知システム

倉庫のマテハン異常検知システムについては、リスクを無くす取り組みと考えています。当社の物流はご注文を頂いてから納品までのリードタイムが短く、いわゆる瞬発力を期待した物流を行っておりました。
そのため、マテハンの故障リスクは常に考慮しておく必要があります。これは一般的に、耐用年数や補償期間などから部品を定期的に交換して未然に防いでおりますが、突発的な故障については、異音の有無など人の経験や勘に頼っており課題でありました。

この課題について神栄テクノロジーは振動や衝撃を検知し解析するセンシング技術を持ち、また予知するための深い知識を持っていたことから、両社での共同開発というかたちで取組みを進めました。
シャトルなどのマテハン機器は振動やモーター温度などになんらかの予兆が発生すると想定して、検知するための条件を検討いただき、シャトルに振動と温度を検知するセンサを取り付け、常時監視しくみができました。
このシステムで検証を重ねて、機器の異常や故障による長時間の物流機能の停止を未然に防止することで「止まらない物流」を実現できる環境が強化されると考えております。

マテハン機器異常検知システムに使用される各センサ

マテハン機器異常検知システムに使用される各センサ

振動・温度のトレンドグラフ

振動・温度のトレンドグラフ

阪神ALC内の最新のシャトル

阪神ALC内の最新のシャトル

「改善と進化を続けるALCの高機能物流
~品質管理機能の強化でS3プラットフォームを導入~

当社は、平時・有事を問わず「止まらない物流」を実践していますが、この技術とノウハウはさまざまな連携先の皆様に支えられているものと感謝しております。
私たちの医薬品流通を取り巻く環境は日々大きく変化しており、物流効率化など一つひとつ対応していくことが求められます。
今後は、GDP対応型クラウド監視システムやマテハンの異常検知システムを全社的に拡大導入していきます。
保管・輸配送において信頼性の高いセンサー技術とシステムそして開発から保守まで一貫する神栄テクノロジーのS3プラットフォームを活用し、今後も、品質管理の強化と、「止まらない物流」を磨いてまいります。

若菜常務

日本列島は地震、津波、台風、水害、豪雨、竜巻など常に自然災害の脅威に晒されております。それらの自然災害は、電気・ガス・水道・燃料・道路・鉄道など私たちの生活環境を大きく脅かしています。災害とは切り離せないこの国だからこそ、あらゆるシナリオに対し、万全の準備をしておく。
私たちにとって、薬を届けるということは、ライフラインを担うことでありこの取り組みに終わりはありません。

※本内容は2024年6月現在のものになります。

※各サービスの仕様・デザイン等は改良のため予告なく一部変更することがあります。

製造・物流の品質管理を効率化しながら
信頼性を向上するDX化への
取り組みを支援します